高周波用語集一覧

【高周波用語集】表皮効果(Skin Effect)

表皮効果とは

金属に電流を流すと直流信号は金属の中を一様に流れ、その電流の最大値は金属の固有抵抗$\small{ρ}$と断面積$\small{S}$と長さ$\small{L}$で決まります。
即ち、抵抗値$\small{R}$は

$R = ρ \cdot \dfrac{L}{S}$

従って断面積が大きいほど抵抗値が小さくなるという性質をもっています。
では、金属に高周波信号を加えるとどうなるでしょうか。
高周波信号は周波数が高くなるに従って、導体の断面を一様には流れず、表面に近いところを密集して流れ中心部には殆ど流れません。このような現象を表皮効果と呼んでいます。これは、電流を流すとその直角方向に磁界が生じ、この磁界の密度は導体の中心部ほど強くなり、その磁界による逆起電力が発生し電流が流れるのを阻止する方向に働くからです。

川の流れを考えてみましょう。
川は川底に砂や石がごろごろしています。これらの石ころは川の流れをさえぎり、あたかも水が流れにくくなるように働きます。また、大きな石の周りには渦や淀みなどができ、このため川底に近い部分は流れが緩やかになります。一方、川の表面に近い部分では川底の影響は殆ど無くなり、早く流れていきます。これは川の表面ほど流れを遮る抵抗が小さいからなのです。

表皮効果

この様子は高周波の場合の表皮効果と良く似ています。高周波電流はこのように導体の表面に近いところしか流れないのです。
表皮効果は導体の表面に流れる電流の$\require{physics} \flatfrac{1}{e} \fallingdotseq 0.37$になる深さ$\small{d}$を計算します。

$d = \sqrt{\dfrac{2ρ}{ωμ}} = \sqrt{\dfrac{2}{σωμ}}$
$\small{ρ}$:導体の抵抗率
$\small{σ}$:導体の導電率 $= \require{physics} \flatfrac{1}{ρ}$
$\small{ω}$:電流の角速度 $= 2πf$
$\small{μ}$:導体の透磁率

導体が銅の場合を考えてみます。銅は非磁性体なので透磁率は空気中の透磁率とほぼ等しくなり

$μ \fallingdotseq 4π \times 10^{-7}$ (H/m)

また銅の導電率

σ=58.1×106 (s/m)

ですので

fをGHzで定義すると表皮深さdは

d≒2.09×√1/f (μm)

1GHzでは約2μm 、10GHzでは約0.7μmとなります。即ち、電流のほとんどが導体表面付近に集中していることが分かります。このことから、同軸コネクタやフィルタなどの構造体には主に加工性や強度を重視した金属で製作し、電流の集中する表面付近には、周波数による表皮効果を考慮した銀メッキなどを施す手法が用いられています。

周波数(GHz) 0.1 0.3 0.5 1 3 5 10
6.61 3.81 2.95 2.0 1.21 0.93 0.66
6.42 3.70 2.87 2.03 1.17 0.91 0.64
7.57 4.37 3.38 2.39 1.38 1.07 0.76
アルミニウム 8.37 4.83 3.74 2.65 1.53 1.18 0.84

表皮効果

高周波用語集》
デシベル計算減衰器固定アッテネータ抵抗値表終端器、抵抗整合器アンプの用語解説物理定数周波数と波長表皮効果(Skin Effect)損失リターンロス・VSWR分配・合成同軸切換器同軸ケーブル同軸ケーブルの呼称と標準的な規格同軸コネクタ同軸コネクタ基本構造雑音指数インピーダンスマッチング(インピーダンス整合)

【高周波用語集】損失

損失とは

通常、入出力のある系に信号を入力したときには、その系の特性に応じた信号が出力されます。
換言すれば、アンプであれば入力信号は増幅され、受動回路であれば減衰した信号が出力されます。

ここではアンプについて考えて見ましょう。
例えば、利得が20dBのリニアアンプ(入出力の増幅度が直線的であるアンプ)では、そのアンプのダイナミックレンジ(これ以上出力すると歪んでくる限界レベル)を超えない限り

Pout(dB)=Pin(dB)+20dB

の関係が成り立ちます。

損失

では、増幅機能の無い系に信号を入力した場合にはどうなるのでしょうか。例えば、同軸ケーブルで信号を伝送する場合を考えて見ましょう。
理想的な同軸ケーブルは、どんなに長距離で信号を伝送しても、入力信号と同じレベルの信号が出力側に出てくることです。

ところが、同軸ケーブルの中の高周波信号は
(1)導体の固有抵抗による熱損失
(2)絶縁体による誘電体損失
(3)シールドの不完全さによる電波漏洩
(4)インピーダンス不整合による反射損失
などいろいろな損失があり、全て無効な電力損失となります。

損失係数Lは

L=(Pout-Pin)/Pin

と定義し、小さいほうが損失は小さくなります。
この式よりアンプの場合と異なり、損失係数はは1より小さくなるため、デシベル換算した損失L(dB)は負の値となります。

損失

損失を減らす理由

損失は少ないに越した事はありませんが、体感的に損失を考えてみます。

例えば、放送局から200MHz、1kWの電力送信をする場合について考えて見ます。
仮に、この電力を3D-2Vの同軸ケーブルを使用してアンテナ迄10m伝送したらどうなるでしょう。

3D-2Vのケーブル損失は1km当たり219dBですから、10mでは2.19dBです。デシベル値を真数に直すと0.6、即ち60%しか伝送されないことになり、400Wは熱になってしまいます。
電熱器を働かせていることと同じですね。
20D-2Vの同軸ケーブルでは1km当たりの損失が41dBと大幅に軽減されますが、10mで0.04dB、これでも約0.9%、9W分は熱になってしまいます。
従って、この場合は出力段とアンテナまでの距離を最小にし、且つ低損失の導軸管などで極限の損失まで持っていかなければ折角、大電力増幅しても無効な電力になってしまう訳です。

今度はアンプの入力段に損失がある場合について考えて見ましょう。
入力段の損失は熱雑音を増加させ、入力信号のS/N比(またはC/N比)をその損失分だけ悪化させます。入力段に固定減衰器を入れたことと同じなのです。
総合雑音指数FTは、アンプ単独の雑音指数F(dB)に損失分L(dB)を加えた値、即ち

FT(dB)=F(dB)+L(dB)

となります。従って、LNA(Low Noise Amp)など低レベルの信号を扱う場合には,入力段の損失を最小にして、信号成分を悪化させないようにすることが重要なのです。

損失計算

損失(dB) 損失係数 減衰比(%)
0 0 0
-0.01 0.002 0.2
-0.05 0.011 1.1
-0.1 0.023 2.3
-0.15 0.034 3.4
-0.2 0.045 4.5
-0.5 0.109 10.9
-1.0 0.206 20.6
-2.0 0.369 36.9
-3.0 0.499 49.9
-6.0 0.749 74.9

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デシベル計算減衰器固定アッテネータ抵抗値表終端器、抵抗整合器アンプの用語解説物理定数周波数と波長表皮効果(Skin Effect)損失リターンロス・VSWR分配・合成同軸切換器同軸ケーブル同軸ケーブルの呼称と標準的な規格同軸コネクタ同軸コネクタ基本構造雑音指数インピーダンスマッチング(インピーダンス整合)

【高周波用語集】リターンロス・VSWR

リターンロスとは

リターンロスとは、読んで字の如く反射損失のことです。例えば、ある装置に高周波信号を供給しようとする場合一般的にはコネクタ付き同軸ケーブルで接続します。
この時、伝送路は同軸ケーブルを介して同軸コネクタという接続点が出来ます。当然同軸コネクタもインピーダンスマッチングされているものですが、ミクロ的に見れば接続点は境界面にあたり、この点でインピーダンスの不連続点が起きるのです。このような不連続点は同軸コネクタとプリント基板の接合部でも起きます。従って、この電気的な不連続点を最小にすることが求められるのです。

リターンロス

この伝送路に信号を印加すると、この接続点で反射が起き信号の一部は信号源側に帰っていきます。
この入射波と反射波の比をデシベルで表したものがリターンロスとなります。
この入射波と反射波は同一周波数なので位相が一致すると定在波が立ちます。
そのときの最大振幅と最小振幅の比をVSWR(電圧定在波比)と呼んでいます。

リターンロスとVSWR,反射係数の関係

 Return Loss=20log10(VSWR+1/VSWR-1)  (dB)

  VSWR=(10R.L./20+1/10R.L./20-1)

  反射係数|Γ|=(VSWR-1)/(VSWR+1)
|Γ|=(Zi-Zo)/(Zi+Zo)

Return Loss(dB) 電圧定在波比(V.S.W.R) 反射係数(Reflection Coeff.)
60 1.002 0.001
50 1.006 0.003
40 1.020 0.01
35 1.036 0.018
30 1.065 0.032
29 1.074 0.036
28 1.083 0.040
27 1.094 0.045
26 1.106 0.050
25 1.119 0.056
24 1.135 0.063
23 1.152 0.071
22 1.176 0.079
21 1.196 0.089
20 1.222 0.1
19 1.253 0.112
18 1.288 0.126
17 1.329 0.141
16 1.377 0.159
15 1.433 0.178
14 1.498 0.200
13 1.577 0.224
12 1.671 0.251
11 1.785 0.282
10 1.925 0.316
9 2.100 0.355
8 2.329 0.398
7 2.615 0.447
6 3.010 0.501
5 3.569 0.562
4 4.420 0.631
3 5.847 0.708
2 8.723 0.794
1 17.399 0.891
0 1.0

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【高周波用語集】減衰器

Attenuators

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減衰器とは

高周波回路に欠かせない減衰器(アッテネータ)とは、一言でいえば、「入出力の整合を保ちつつレベルを減衰させる物」ということになります。
レベルを減衰させることは、抵抗一本で可能ですが、それでは入出力インピーダンスが変わってしまいます。

減衰器 回路図

それでは信号の反射が起きてしまうので、レベルを減衰させつつ、入出力インピーダンスが特性インピーダンスとマッチングするための回路を考えると、上図のようになります。
左側の回路がT型、右側の回路がπ型と呼ばれているもので、それぞれの抵抗値の計算式は、次のようになります。

減衰器 計算式

特性インピーダンス50Ωと75Ωの抵抗値はこちらをご覧下さい。
固定アッテネータ抵抗値表

この減衰器の用途ですが、、次のようなことが考えられます。

(1)レベル調整用減衰器

いろんな高周波コンポーネントが組み合わされた回路において、レベルダイヤグラムを検討していると、そのレベルを調整するために固定減衰器を挿入します。
たとえば、多段型の増幅器などは、入出力間で規定の利得に設定するには、どこかの場所に固定減衰器を入れて、利得調整する必要が出てくるでしょう。

(2)測定用減衰器

減衰器は、レベルを正確に測る事ができ、そして何よりも「直線性が良い」ということがいえます。
この直線性が良いということは、どのような信号レベルにおいても、減衰量は一定であるということです。
この直線性が良いということは、測定において非常に重要なことなのです。
この特性を利用して、方法は、RF置換法などとも呼ばれています。

(3)インピーダンスマッチング用減衰器

減衰器は、インピーダンスマッチング用(整合用)にも使用されます。
たとえば、6dBの固定減衰器をマッチング用に挿入した場合、入力側から見たリターンロスは、出力側を開放、または短絡し、全反射の状態で、固定減衰器の入力側から出力側で6dB、出力側から入力側で6dB、合計12dBのリターンロスになります。つまり、全反射である0dBのリターンロスが12dBに改善されるわけです。
このインピーダンスマッチング用の減衰器は、機器内用だけでなく、測定用のケーブルに接続して、測定器側のミスマッチによる誤差を軽減するためにも使用することがあります。

固定減衰器の例

固定減衰器は高周波特性を伸ばすために同軸構造になっており、また抵抗基盤上も同軸シェルとのマッチングが最良なるよう工夫されています。
通常は、システムのレベル調整用として、3,6,10,20dBが多く使用されています。
固定減衰器も終端器同様、許容電力以下で使用しなければ、発熱や発煙の原因となります。

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【高周波用語集】分配・合成

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同軸分配器・合成器とは

同軸分配器(合成器)は高周波信号を効率よく分配(合成)することができる機能を有しています。
使用する周波数帯域、コネクタ、特性インピーダンス及び分配数により、最適な分配器(合成器)を選択することができます。

同軸分配器の損失

同軸分配器は、通常分配数に応じて、入力端から入った信号を等分配します。
例えば図のような2分配器の場合は、入力信号として1のレベルを加えると出力端には1/2づつ分配された信号が出力されます。デシベルに換算すると、夫々3dBの分配損失が生じます。
分配損失は概算ですが、3分配では1/3づつ出力されるため5dB、4分配では6dB、8分配では9dBとなります。

分配 合成説明図

一方、出力端から夫々等しいレベル、同一周波数、同位相の信号を印加すると、上記入力端には2倍の電力が出力されます。
この場合は合成器として使用します。即ち、分配器と全く逆の動作をするわけです。
なお、周波数や位相の異なる信号をそれぞれ入力1と入力2から入れた場合は、入力された信号の半分のレベル(-3dB)だけ出力され、残りの半分は内部のアイソレーション吸収用抵抗に消費されます。

分配 合成説明図

更に、このような回路を通過する際に一部の信号は熱になったり、接続部分などで反射して通過損失が生じます。分配損失を無くすわけにはいきませんが、この挿入損失を如何に小さくするかが重要です。通常、挿入損失は0.5dB~2dBを目安としておくと良いでしょう。

アイソレーション

アイソレーションは分配器にとって重要なファクターです。
例えば図2のような合成器に2つの異なる信号を印加するものとします。このとき入力2から入力1へ信号が回り込むことが考えられます。
この時の入力2への印加レベルと入力1への回りこんだ信号レベルの比がアイソレーションとなります。アイソレーションの値は大きいほど望ましいのですが、通常は20dB程度です。
アイソレーションが悪いと混信が起こり易いということもありますが、分配出力の片側を外した場合に負荷側の影響を大きく受け、もう一方の経路の特性にも大きく影響します。

VSWR

分配器もインピーダンスマッチングが重要です。通常の試験では測定する端子以外を全て同じインピーダンスの終端器で終端し、ネットワークアナライザで反射特性を測定します。
VSWRは1に近いほど反射が少ないので効率よく電力を伝えることができます。VSWRについてはインピーダンスマッチングの項を参照して下さい。

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高周波用語集》
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【高周波用語集】同軸ケーブルとは

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同軸ケーブルとは

正式名称を高周波同軸ケーブルと呼ぶように、高周波信号を効率良く負荷側に伝送する目的で利用されています。
効率良くという意味は、信号源の電力が負荷側に伝送ロスを最小にして、負荷側で反射が生じない条件で伝送するということなのです。

ある分布定数線路(無限線路を想定)には、均一に存在する固有の$\small{L}$,$\small{C}$,$\small{R}$で構成されているとします。
その線路での特性インピーダンス$\small{Z_{0}}$は伝送損失がないと仮定すれば

$Z_{0} = \sqrt{\dfrac{L}{C}}$

であり、周波数に関係なく一定の値です。単位はΩ(オーム)となります。
この特性インピーダンスは分布定数線路のどこから見ても同じ値となります。

信号源から負荷側に、最大電力を伝送するための条件は、負荷側で反射を生じさせないこと、即ち、信号源インピーダンスと負荷側のインピーダンスが等しいことが必要です。
ところが、信号を伝送するためには、信号源と負荷の間に伝送線路が必要であるため、この伝送線路も同じ値の特性インピーダンス線路を使用する必要があります。
これをインピーダンス整合、またはインピーダンスマッチングと呼んでいます。

幸い、上記理由から、分布定数線路は周波数に関係なく、何処を切っても同じ特性インピーダンスなので、何Ωのインピーダンスマッチングをするかを決めれば、どういう伝送線路を使用するかが決まります。

同軸ケーブルの基本構造

通常、高周波機器間を接続するためには、取扱いし易い同軸ケーブルが使用されています。
同軸ケーブルは、構造的に、中心導体とその周りに絶縁体を配置し、さらにその外周に金属編組、または外部導体が取り囲む構造となっています。

同軸ケーブル

同軸線路の特性インピーダンスは、内部導体の外径を$\small{d}$、外部導体の内径を$\small{D}$、絶縁体の比誘電率を$\varepsilon_{r}$としたとき、下記の式で与えられます。

$Z_{0} = \dfrac{138.15}{\sqrt{\varepsilon_{r}}}\log_{10}(\dfrac{D}{d})$

即ち中心導体の外形と、外部導体の内径で決まる比率が一定の場合は、同軸ケーブルのサイズには無関係に特性インピーダンスは一定となり、また比誘電率が大きいと特性インピーダンスは低くなります。一般に絶縁体で使用される比誘電率は凡そ下記の値です。

・ポリエチレン:2.3
・テフロン:2.1

同軸ケーブルの屈曲性

同軸ケーブルは曲げに対しても外被が内部導体を保護する構造になっていますが、極端な屈曲に対しては伝送特性が悪化します。即ち、曲げた部分では局所的に同軸構造の対称性が崩れ、また絶縁体が収縮によりその誘電率が不均一となって電磁波の伝播速度に乱れが生じ位相が変化します。
また、編組が伸びることにより、遮蔽効果が劣化し伝送損失も悪化します。最小曲げ半径はメーカーのカタログに記載されていますのでご確認ください。

同軸ケーブルを使用する利点

同軸ケーブルは外部導体が中心導体を取り囲んでいる構造になっています。伝送したい高周波信号は中心導体と外部導体間で伝播していきます。 外部導体は金属であることから外部への信号漏洩や外部からの電波の侵入がここで遮断されるため、これをシールド効果と呼んでいます。同軸ケーブルはこのように、高周波信号を効率よく伝送すると共に、外来電波やノイズの影響を最小限にできるため、放送局、中継所、工場などで、また音声信号や映像信号からマイクロ波信号伝送まで、様々な場所や用途で使用されています。

同軸ケーブルの選び方

同軸ケーブルを選ぶにはまず特性インピーダンスを決める必要があります。 通常無線系の機器の特性インピダンスは50Ωが一般的です。ところがテレビジョンやCATVの機器には昔から75Ωが使われています。これは同軸ケーブルの絶縁体の開発の歴史にも関係しますが、一般の通信用途では50Ω系と75Ω系があるということを覚えておいてください。このため、同軸ケーブルを指定する場合には次のような規格があります。

同軸ケーブルの呼称と標準的な規格

(本仕様は参考値ですので、詳しくはメーカーにお問合せ下さい)

・JISケーブル 5C-2Vの例

5 C 2 V
外部導体の概略内径(mm) 特性インピーダンスが
C: 75Ω
D: 50Ω
絶縁体が
2: ポリエチレン
F: 発泡ポリエチレン
外部導体が
B: アルミ箔付きプラスチックテープと導体編組
V: 一重導体編組
W: 二重導体編組
名称 中心導体径
(mm)
絶縁体外径
(mm)
仕上外径
(mm)
特性インピーダンス
(Ω)
波長短縮率10MHz
(%)
減衰量(dB/km)
1MHz 10MHz 30MHz 200MHz
1.5C-2V 0.26 1.6 2.9 75 67 73 96 145 393
2.5C-2V 0.4 2.4 4.3 75 67 17 52 93 251
3C-2V 0.5 3.1 5.8 75 67 13 42 73 194
3C-2W 0.5 3.1 6.5 75 67 13 42 73 194
1.5D-2V 0.54 1.6 2.9 50 66 24 85 145 415
2.5D-2V 0.8 2.7 4.3 50 66 13 45 80 226
3D-2V 0.96 3.0 5.3 50 66 15 47 8 219
3D-2W 0.96 3.0 6. 50 66 15 47 82 219

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デシベル計算減衰器固定アッテネータ抵抗値表終端器、抵抗整合器アンプの用語解説物理定数周波数と波長表皮効果(Skin Effect)損失リターンロス・VSWR分配・合成同軸切換器同軸ケーブル同軸ケーブルの呼称と標準的な規格同軸コネクタ同軸コネクタ基本構造雑音指数インピーダンスマッチング(インピーダンス整合)

【高周波用語集】同軸コネクタとは

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同軸コネクタとは

同軸コネクタは同軸ケーブルと装置の入力または出力端に装着し、高周波信号をロス無く着脱できる器具です。
周波数や目的に応じて色々なコネクタが使用されていますが、接続部分(開口部)は国際規格により決まっているため、同種のコネクタであればメーカー間での互換性があります。

一般的には、放送局の映像系で主に使用されているBNC型コネクタ、高周波系ではN型コネクタ、TNC型コネクタなどが一般的です。また、マイクロ波帯ではSMA型やN型コネクタ等が使用されています。

同軸コネクタの種類と特徴

ここでは、実際の同軸コネクタの例と特徴、主な用途などについて説明します。

コネクタ名および写真 説明
BNC型コネクタ
BNC型コネクタ
同軸コネクタの中でも、非常に広範囲にわたって使用されているコネクタです。バイオネットロック機構による着脱方式となっているのが特徴で、機器内、外部との接続コネクタ等用途を問わず幅広く使用されています。50オーム用コネクタですが、開口部の絶縁体を一部取り除き、75オームで整合が取れるようになっている物もあります。
75オームタイプも50オームタイプと、機械的には互換性があります。使用周波数はDC~4GHz程度です。
TNC型コネクタ
TNC型コネクタ
BNCと同じ同軸構造を持ちながら、接続部分のみBNCのバイオネットロック方式から、ねじ式に替えたものです。接続部分の接続安定性、外部漏洩などはBNC型よりも高性能です。
N型コネクタ
N型コネクタ
ねじ勘合式で、マイクロ波測定器用などに数多く使用されています。形状が比較的大きいため、機器内ではなく、機器対機器の接続に使用される場合が多いです。使用周波数はDC~10GHz程度です。
SMA型コネクタ
SMA型コネクタ
マイクロ波帯で、最も一般的に使われているコネクタです。N型に比べて小形になっているのが特徴で、主に機器内配線に使用されます。
内径が1.27mm、外径が4.2mmとなっていて、内導体を支持する絶縁物にはテフロンが用いられています。テフロンの比誘電率は約2.0です。使用周波数はDC~18GHzです。
SMAコネクタの名称は、(Sub Miniature Type A)からきています。
3.5mmコネクタ
3.5mmコネクタ
SMA型コネクタとの勘合互換性を保ちながら、さらに高い周波数で使用できるコネクタです。
SMA型コネクタでは、絶縁物にテフロンを用いている関係上、絶縁物が空気の場合より波長が短縮し、遮断周波数も低くなります。3.5mmコネクタは、絶縁物を空気にすることにより、この波長短縮を抑えています。また、テフロンより、誘電率が低くなることから、外径を小さくすることができ、導波管伝送モードの遮断周波数をさらに上げることができます。
このコネクタの外形寸法は3.5mm、内径寸法は1.5mmとなっています。中心導体を支持するために、誘電率の低い誘電体にレンコンのように穴を開け、実質の誘電率を空気に近くした支持絶縁物を使用しています。
2.92mmコネクタ
2.92mmコネクタ
SMA型コネクタとの接続互換性を保ちながら、3.5mmコネクタより外径がさらに小さくなっています。
2.92mmコネクタは、内導体径がSMAと同じ1.27mmとなっており、絶縁体をテフロンから空気に変更することにより、外形が2.92mmとなっています。これにより導波管モード遮断周波数をさらに高くすることができ、使用周波数DC~40GHzを実現しています。
Kコネクタと呼称しているメーカーもあります。
2.92mmコネクタより、さらに高い周波数で使用できるものとして、2.4mmコネクタ、1.85mmコネクタ(Vコネクタ)、1mmコネクタ(W1コネクタ)などもあります。
SS型(SSMA型)
SS型(SSMA型)コネクタ
SMA型をさらに小型化し、機器内のコンパクト化のために用いられることがあります。
SMB型
SMB型コネクタ
SS型と同様、小形コネクタですが、SMB型は接続がスナップロック方式となっています。
SML型
SML型コネクタ
SMB型と同様の小形、着脱容易性の特長を持ちながら、ローコスト化した、当社独自のコネクタです。

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【高周波用語集】雑音指数

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雑音指数とは

増幅器(アンプ)はレベルの小さい信号を扱い易いレベルまで大きくする装置です。単純に電力利得20dBのアンプといえば、100倍増幅する能力を持っています。
この時、理想のアンプであれば入力信号を20dB増幅した信号が出力端に出てきます。
ところがアンプの中では増幅素子までの通過損失や増幅素子自体でも熱雑音が発生するため、この雑音成分も一緒に増幅してしまいます。当然これらの雑音成分が少ないことが良いアンプということになります。

信号レベル(S)と雑音レベル(N)の比をS/N比(エスエヌ比)と呼んでいます。入力信号にも雑音成分が含まれているため入力信号のSi/Ni、アンプを通過した出力信号をSo/Noとするとその比をとったものを雑音指数(Noise Figure)と呼んでいます。
即ち、雑音指数Fは

F= (Si/Ni)/(So/No)

熱雑音電力は絶対温度Tでは一定でありボルツマン定数K、帯域幅をB、アンプ利得をGとすると

F=No/G・KTB

即ち、アンプの利得G、帯域幅Bが分かっている場合は、雑音電力を測定すれば雑音指数が計算できます。一般には、デシベルの方が扱いやすいので

F(dB)=10log(No)-10log(G・KTB)
=No(dBm)-G(dB)-KTB(dBm)

通常、T=290°Kを使用します。

ボルツマン定数K=1.38×10-23(J/°K)

F(dB)=No(dBm)-G(dB)-B(dB)-174(dBm)

となります。

雑音指数説明図

雑音指数の測定

アンプの入力端を特性インピーダンスと等しい抵抗で終端し、スペクトラムアナライザでそのときの1Hz当りのノイズ電力Noを測定すれば、帯域幅Bの項は1(0dB)となり雑音指数が測定できることになります。

ただこの方法は、雑音指数が小さいときにはスペクトラムアナライザ自体のノイズレベルが高いので、アンプを通過した際に増加するノイズ電力を測ることが難しく正確に測定できない事があります。
このため、正確に雑音指数を測定するには、Noise Figure Analyzerなどの専用測定器を使用します。
(詳しくは測定器メーカーサイトにてご確認下さい)

多段増幅器の総合雑音指数

アンプが複数段接続された場合の総合雑音指数はどうなるでしょうか。
各段のアンプの雑音指数の利得をG1,G2・・・Gn、雑音指数をF1,F2・・・Fnとし、多段接続した場合のアンプの総合利得をGsys、また総合雑音指数をFsysとします。
(注:この場合の利得及び雑音指数はデシベルではなく真数です)

雑音指数説明図

この系の総合雑音指数Fsysは

Fsys=F1+{(F2-1)/G1} +{(F3-1)/G1・G2} +・・・+{(Fn-1)/G1・G2・・・・Gn-1}

この式で直感的に言えることは、アンプの利得が十分大きければ、3段目以降の雑音指数は無視できるレベルとなります。
従ってプリアンプ段には雑音指数の小さい低雑音アンプ(LNA)を使用すれば後段のアンプには雑音指数には余り気を使う必要がありません。
即ち、初段のアンプ利得が100倍(20dB)、2段目の雑音指数10(10dB)としても2段目の雑音指数の増加分は9/100ですので、0.09しか影響しないのです。
実際にはこの計算値をデシベル値に直しますので、殆ど初段アンプの雑音指数(dB)となります。

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高周波用語集》
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【高周波用語集】インピーダンスマッチング(インピーダンス整合)

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インピーダンスマッチング(インピーダンス整合)

高周波回路においては、負荷に信号源の電力を最も効率よく伝送することが要求されます。
このため、伝送線路や負荷端で反射が最小となるようにインピーダンスマッチングを行ないます。
特に同軸コネクタや、同軸回路からストリップラインへの変換部等では物理的変化点があるため、VSWRが最小となるように部品の選定や整合回路により最適化を行なうことが重要です。高周波系での特性インピーダンスは通常50Ωですが、テレビやCATVなどの伝送線路では75Ωが一般的です。

インピーダンスマッチングの方法

(1)アンテナ回路でのインピーダンスマッチング

アンテナで受信した信号は微弱なため、その信号を減衰なく低雑音アンプ(LNA)に受け渡す必要があります。このためには極力アンテナと次段のアンプへの経路を短くして伝送損失を最小にすること、インピーダンスマッチングを行い反射損失を起こさないことが重要です。

テレビ電波などをアンテナで受信した場合には、アンテナの直近にブースタアンプなどで一旦増幅して、宅内やビル内に引き込むことが一般的なので、アンテナとアンプ間は75Ωの同軸ケーブルで接続します。この場合には、伝送路を短くして、ひたすら低損失の同軸ケーブルで接続することが重要です。VSWRが悪いからといって間違ってもこの部分に固定減衰器を入れないことです。雑音指数が悪化し、受信感度が劣化します。

インピーダンスマッチングイラスト

ブースタアンプの出力端と宅内の分配器や分岐器との間の同軸ケーブルが波長に比べて十分長く、インピーダンスマッチングが不十分な場合には同軸ケーブル内で定在波が立ち感度不良の原因となります。受信端でのレベルが十分ある場合は固定減衰器を数dB入れただけで、行きの減衰量と帰りの減衰量を加えた値がリターンロスの改善分となり、実質的にVSWRは改善されます。

(2)アイソレータを挿入する

業務用機器などで、定在波で周波数特性が悪化しないように、機器の入力、または出力端に使用周波数帯域に適合するアイソレータを挿入することも有効です。この場合には入力、または出力端はアイソレータの終端抵抗で終端されたことになり、安定なインピーダンスマッチングを行なうことができます。

インピーダンスマッチングイラスト

(3)インピーダンス変換器を挿入する

出力インピーダンスが50Ωの信号発生器から同軸ケーブルで75Ωの電測計に接続してレベルを測ろうとする場合には、インピーダンス変換をしなければ反射が起き正確な測定ができません。このため目的に応じて、抵抗型インピーダンス変換器、低損失なトランス型インピーダンス変換器、或いはストリップライン型インピーダンス変換器等を使用する必要があります。この場合にはインピーダンスを変換した後の特性インピーダンスに合った同軸ケーブルを使用します。当社では50Ω←→75Ωへのインピーダンス変換器を各種取り揃えております。

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